神田の古本屋街を歩いていて何となく買ってしまった「天誅組(大岡昇平著・講談社)」という、ちょっと読みづらい本を、
ちょっとムリして読んでいるうちに引き込まれ、何だか無性に四万十川の源流域の、その「吉村虎太郎のふるさと」とか
いうところに行ってみたくなった・・・などと、今回の旅の動機を、人のいい運転手さんの行きつけの居酒屋で話していると、
横の席から「あんさん、それならワシの知り合いに、そこから嫁さんもろうちゅうがぁおるけ・・・」と、三十才前後の元気な
お兄さんが、声をかけてきた。
十人ほどのグループで来ていた客の一人で、仲間から「やつさん」とか「ムギやん」とか呼ばれていた赤銅色の、
人懐っこい、その青年が明朝「須崎」まで自家用車(軽トラ)で送ってくれるという、
まことに信じられないようなありがたい結末を迎え、あわただしくその日は終る。
余談ながら「やつさん」というのは、彼の両親が二人とも八人兄弟の末っ子だからだとか、「ムギやん」というのは、
「健康にいいから」という理由で、子供の頃、お婆さんに、しょっちゅう麦飯を食わされていたからだとか、一緒に飲みに
来ていて「下戸だ」といいながら仲間からむりやり焼酎を注がれていた青年がボソっと教えてくれた。
「ムギやん」という呼び名が気に入ったので、以降、須崎で分かれるまで、彼のことを、そう呼び続けることになる。
(ついでながら、この章のイメージボタンが軽トラなのは「ムギやん」の自家用車から来ているという訳です)